『光触媒標準研究法』
大谷文章 著
はじめに
第0章 光触媒研究の技術――序にかえて
Section 1 科学研究における技術
1-1 光触媒の研究室にて
何を伝えるのか
1-2 実験データと結果
データと「結果」/どうやって伝えるのか/雑誌会/登頂の真偽と実験データ/知的生産の技術/
データマイニング
1-3 光触媒の実験技術
「光触媒」をはじめたころ/研究と技術――ガスクロマトグラフィー/
研究と技術――クロマトグラフィーのピークと結果の予測/
研究と技術――メリーゴーランド/研究と技術――水銀灯冷却装置/
水銀灯の発熱量をもとめる/研究と技術――撹拌装置/バブリング/実験ノート
Section 2 この本のねらい
2-1 研究技術の解説書
実験ハンドブック/この本のめざすところ/神は細部に宿るか/この本を読む方々へ
第1章 光触媒反応の操作と解析
Section 1 光触媒反応の概要
1-1 光触媒反応の基礎
この本を読むのに最低限知っておいてほしいこと/
「光触媒反応」および「光触媒」という用語の定義
1-2 光触媒反応の原理
固体の電気伝導性による分類と半導体/固体の電子エネルギー構造/半導体の光吸収と電子-正孔/
電子-正孔と酸化還元
1-3 光触媒反応の特徴と化学プロセス
光触媒反応の特徴/励起電子の反応/正孔の反応
1-4 光触媒反応の速度:光触媒活性
光触媒活性/量子収率/反応速度
Section 2 光触媒反応の実験
2-1 光触媒の準備
光触媒の入手/触媒学会参照酸化チタン/粉末の前処理/■実例:光触媒反応による有機化合物除去/
金属の担持/光析出法(photodeposition)/■実例:光析出法による塩化白金酸からの白金の担持/
含浸-水素還元法(impregnation-hydrogen reduc-tion)/回転式電気炉/流量計による制御/
■実例:含浸-水素還元法による白金の担持/混練法(mechanical mixing)/コロイド塩析法/
■実例:コロイド塩析法による白金微粒子の担持
2-2 固定化光触媒
光触媒の固定化/ウェットプロセスとドライプロセス/コーティング液とその調製/
■実例:スラリー状コーティング液の調製/基板の前処理/器具によるコーティング/
引きあげ法による薄膜のコーティング/引きあげ装置/自動運転型の引きあげ装置/
コーティング後の熱処理/スピンコーティング/ドライプロセスによる透明薄膜調製法/
透明膜の膜厚測定法/不透明膜/グラスファイバークロスへの担持
2-3 反応系の設計と準備
条件の選択/光源の選択/波長の選択――回折格子分光器/
波長と強度の選択――光学フィルター/反応容器
2-4 標準的な実験操作例
標準的な光触媒の実験/メタノールの脱水素反応/■実例:白金担持光触媒によるメタノールの脱水素反応/
酢酸の酸化分解反応/■実例:酸素存在下水溶液中の酢酸の酸化分解反応/銀塩水溶液の光触媒反応/
■実例:銀塩水溶液からの酸素発生・銀析出反応/光触媒反応によるピペコリン酸の合成/
■実例:白金担持光触媒によるL-リシンからのピペコリン酸合成/空気中のアセトアルデヒドの酸化分解/
■実例:アセトアルデヒドの気相光触媒分解反応
Section 3 光触媒反応の化学分析
3-1 化学分析が解析の第一歩
3-2 定性分析――反応生成物の同定
定性分析と同定/同定とはどういうことか/有機化学における化学物質の同定/融点/沸点測定/
■実例:元素分析値と融点の表示/ミリマスの利用/■実例:ミリマスによる解析/同定のための単離/
クロマトグラフィー/クロマトグラフィーによる化学物質の推定/重ね打ちによるピークの確認/
薄層クロマトグラフィー(TLC)/■実例:TLCによる分析
3-3 定量分析
定性分析と定量分析/採取分析・その場分析・反応後分析/採取分析――クロマトグラフィー/
ガスクロマトグラフィーによる無機ガス分析/大学院生との会話/
ガスクロマトグラフィーによるC1化合物の分析/ホルムアルデヒドの検出と定量/
ガスクロマトグラフィーによる水溶液中の有機化合物の分析/低沸点有機化合物標準水溶液の調製/
ガスクロマトグラフ質量分析器/GC-MS分析のための試料前処理/
■実例:GC-MSによる15NH3と14NH3の分別定量/高速液体クロマトグラフィー(HPLC)/
HPLCのカラムと移動相の交換/その場(in situ)分析/固定化光触媒による色素の分解/反応後分析
/全有機炭素量(TOC)/超親水化現象/接触角の測定/接触角測定結果の解析
Section 4 反応機構の解析
4-1 光触媒反応と暗反応
光反応・光触媒反応・暗反応
4-2 光触媒反応の追跡
光触媒反応の速度/反応の量論の決定/経時変化/経時変化の解析と速度の算出/反応速度の解析/
反応速度式/次数の決定/1次反応
4-3 反応機構
光触媒反応と1次反応/素反応/反応速度定数とその意味/反応速度定数の温度依存性と活性化エネルギー/
光触媒反応の活性化エネルギー/前指数項と頻度因子/定常状態近似による素反応式から反応速度式の導出/
光触媒反応における2次反応/光触媒反応における律速段階/光触媒反応における吸着の役割/
固体表面への化学物質の吸着/ラングミュア式による反応速度の解析――表面反応律速/
ラングミュア-ヒンシェルウッド機構/光触媒反応速度式の再考
4-4 反応機構と中間体
中間体(原料)の特定と追跡/超高速レーザによる光触媒の励起初期過程の解析/
反射赤外分光法による光触媒反応の解析/同位体をもちいる反応機構の解析/
プローブ分子(トラップ剤)あるいはスカベンジャーなどによる機構の解析
Section 5 量子収率の測定と解析
5-1 光化学の立場から見た光触媒反応
光化学の第1法則と第2法則/電磁波と光/光量子(光子)/光強度と光子数/光励起に必要なエネルギー
5-2 光化学反応の効率
量子収量・量子収率・量子効率/光触媒反応の量子収率/電流2倍効果/自動酸化型ラジカル連鎖反応/
光子利用率(みかけの量子収率)/量子収率は標準データか
5-3 量子収率・光子利用率の測定
光源のスペクトルと光量の測定/光源のスペクトル測定/パワー測定/化学光量計/
■実例:トリオキサラト鉄(V)カリウム化学光量計/吸収光量の測定/作用スペクトル
第2章 光触媒の構造特性・物性の分析と解析
Section 1 光触媒の構造特性・物性
1-1 光触媒の評価
構造特性・物性/物理的と化学的
1-2 構造特性・物性の分析と解析
固体構造の評価/全体か一部なのか/バルクと表面/測定値における平均
Section 2 物理的な特性――構造
2-1 比表面積測定の原理と実験
比表面積/BET式による解析/定容法(容量法)吸着量測定装置/定容法の吸着測定操作/
吸着量データから比表面積の算出/流通法による比表面積測定/
ガスクロマトグラフの改造による流通法吸着量測定装置の製作/■実例:流通法吸着測定
2-2 X線回折による構造解析
X線回折測定による結晶構造の解析/結晶構造/結晶面/消滅則/高次の回折/
X線回折パターンからえられる結晶構造以外の情報/X線源/X線回折パターンが2θである理由:ゴニオメータ/
粉末X線回折/■実例:酸化チタンの粉末X線回折パターンの測定/薄膜X線回折(小角入射)/結晶相の同定/
標準試料との比較/酸化チタンの各結晶相の推定/結晶相の定量/
■実例:アモルファス酸化チタン中のアナタース結晶の定量/結晶子の大きさ/シェラー式の誘導/
真の回折線幅(半値幅)のもとめ方/格子の不整ひずみによるピーク幅のひろがり
2-3 光吸収特性
光吸収/吸光度とランバート・ベールの法則/光反射と散乱/相対拡散反射率の測定/光触媒による光吸収/
光音響分光法(PAS)の原理/光音響スペクトルの測定と解析
2-4 走査型電子顕微鏡分析
走査型電子顕微鏡(SEM)の原理と特徴/SEM分析によってわかること
2-5 透過型電子顕微鏡分析
透過型電子顕微鏡(TEM)の原理と特徴/TEM分析試料の準備/■実例:粉末試料TEM観察の準備/
TEM分析によってわかること/電子回折による結晶構造の解析
2-6 粒径分布の測定
粒径とは何か/1次粒子と2次粒子/粒径の測定法
2-7 ラマン分光法
短距離秩序と長距離秩序/ラマン分光による酸化チタンの解析
Section 3 化学的な特性――反応性
3-1 組成と純度
組成と純度/■実例:TiO2(B)中のチタンおよびカリウム量の定量/原子吸光法による元素の含有量の測定/
■実例:原子吸光法による光触媒上の銀の析出量の定量/選択的溶解による酸化チタン結晶含量の定量
3-2 熱分析(Thermal Analysis)
熱分析の概要/熱重量分析(TG)/示差熱分析(DTA)/DTAとTGデータの解釈/示差走査熱量分析(DSC)/
■実例:DSCによる酸化チタン中のアモルファス成分の定量
3-3 X線光電子分光法(XPS)
XPSの測定原理/XPS測定-測定試料/帯電とその補正/定性と定量分析/深さ方向分析
3-4 光触媒の結晶欠陥
酸化チタンの結晶欠陥/酸化チタンの光化学還元/■実例:光化学反応による酸化チタンの還元/
光化学還元量の意味
3-5 光触媒表面の化学特性
吸着特性/吸着量の測定/酸塩基特性
第3章 光触媒の設計と調製
Section 1 光触媒活性を決定する因子
1-1 光触媒活性
光触媒活性の定義/触媒活性/触媒と光触媒のちがい ― ―触媒化学の視点/
光電流 ― ―電気化学の視点/半導体電極の光電流/スラリー電極/光電流は何を見ているのか/
光触媒活性再考
1-2 光触媒活性の支配因子
光触媒活性の支配因子/内部因子と外部因子/主要な構造因子が光触媒活性にあたえる影響/
表面積と結晶性のバランスと「反応電子数」/アナタースとルチル/
作用スペクトル解析によるアナタースとルチルの活性比較/アナタース - ルチル混合結晶は高活性か/
アモルファス酸化チタンの光触媒活性
Section 2 主要因子の制御
2-1 組成
光触媒の組成/d電子の数/ Scaife のプロット/不純物の制御/結晶欠陥
2-2 光吸収
基礎吸収/量子化学計算/バンド構造と状態密度
2-3 結晶構造
熱力学的および速度論的安定性/結晶のつくり分け/酸化チタン結晶の多形/ルチルの結晶構造/
共有の数/アナタースの結晶構造/アナタース微結晶の形状/TiO6八面体構造の由来/
ブルカイトの結晶構造/■ 実例: MDL 「 Chime (チャイム ) 」による結晶構造の3次元表示/
■ 実例:「 VICS 」によるブルカイト結晶構造中の八面体配列の解析/酸化チタン結晶のつくり分け
2-4 表面積と粒径
単分散粒子の比表面積と粒径
Section 3 さまざまな光触媒調製法
3-1 金属酸化物
気相・液相・固相法/加水分解-焼成法/チタンの低次化合物の酸化/有機溶媒中での反応/
固相法:金属窒化物の酸化/気相法
3-2 金属硫化物
金属酸化物とのちがい/金属硫化物ナノ粒子/
サイズ選択的光エッチングによる金属カルコゲナイド粒子の粒径制御
3-3 金属窒化物
金属酸化物の窒化
第4章 光触媒反応系の開発と成果の発表
Section 1 光触媒反応の応用
1-1 有機物の酸化分解
空気中の有機化合物の分解/酸化還元反応――光触媒反応の初期反応/光触媒反応における酸素のはたらき/
酸素の電子構造/アクセプタとしての酸素/自動酸化反応(autooxidation)/酸素供給の制御/
光触媒は万能か――反応の必要条件
1-2 超親水化によるセルフクリーニング
超親水化現象
1-3 水の分解
水の分解による水素と酸素の生成/本多-藤嶋効果と光触媒反応/逆反応の抑制/
■実例:水の光触媒分解のための反応装置/エネルギー変換系としての水の分解
1-4 有機合成反応
光触媒による有機合成反応/光触媒のメリットとデメリット/L-リシンを原料とするL-ピペコリン酸の合成/
グリーンケミストリー>
1-5 高活性光触媒の開発
ABO式血液型による性格分類/アナタース・ルチル・アモルファス
Section 2 光触媒反応研究の発表
2-1 光触媒関連の発表と論文
研究成果を発表する/光触媒研究のオリジナリティ
2-2 学会発表
光触媒関連の学会発表/OHPと液晶プロジェクタ(LCD)/液晶プロジェクタとパソコンの接続/
PowerPointのつかい方のヒント/よい発表のためのヒント/ポスター発表
2-3 学術論文
学術論文の構成/題名(Title)・著者(Author(s) )・概要/要旨(Abstract/Summary)/緒言/
実験/結果と考察(Results and Discussion)/グラフによる結果の表示/最小2乗近似と相関係数/
光触媒活性の議論/結論(Conclusions)/文献・ノート・謝辞/英語の問題
おわりに